「女の子として女の子と付き合えるなら女の子になっていいかな」
「そのほうが気楽だろう」
付き合えもしないヒキコモリがあきらめたように、そして少し嬉しそうに言う。
かつて「首下程度のショートカットのしおりん可愛いからこのしおりんみたいになりたい」なんて言って結局首上まで切り続けていた人間が最近、ついに髪を伸ばしはじめた。
もっとも、完全に女の子になりたいわけでもなく、なだらかなアゴ首すじからして髪を伸ばせばオスとしてのパスはアウトだろう。
スカートを穿きたがるものの、自慰行為に及びたいだけだと気付く。
ヘンタイなだけかもしれない。ヘンタイでもいい、嫌な思いをせず気楽なら。
女の子になるとは、化粧をすることでも、スカートを穿くことでもない。ただただ、じぶんは女の子である、とそれだけのことだ。
でもやはり不定性が邪魔をする。「私は決して女ではない」。
眠っている女の子性が体の奥底から目覚めそうで目覚めないようなむず痒くも気持ちのいい感覚である。いつか気が楽になるかもしれないのだから。