情緒の問題で喋れないことや相手の顔を見てコミュニケーションが取れないことを不自由に感じる気持ちが日に日に強くなる。克服のきっかけができる時をずっと待ち続けている。
月一度会っている病院の先生の顔を知らない。腰より下の白衣と黒いズボンしか見たことがない。母はタカトシ牧場(タカアンドトシ)のどっちかにそっくりだからタカトシ先生と呼んでいる。タカかトシかくらいはっきりしてあげて。
血圧を計る時に「夏バテしてない?」と看護師に他愛なく聞かれた事がある。頷く。優しい気持ちになる。当然看護師の顔も知らない。あの病院の看護師はどの人も優しくしてくれる。
被っているキャップをかっこいいと褒められた。あの千円のキャップは母が母用に買って結局自分にくれたもので、自分が選んだものではない。長い間被った。ツバのダメージ加工の部分が本当にダメージ受けてぼろぼろしてきた。
今被っているのはワークキャップ。人生で2番目に自分で選んだ帽子だ。まだかっこいいと褒められたことはない。
診察で先生と会うときはキャップを深く被ってツバで目を隠す。
「死にたい」と口癖のように頭の中で繰り返すのをやめたい。もしうつ病ならそれは不可避と思われるかもしれない。口癖になるとより死にたい気持ちが強くなる。こうして死にたいとか死んでしまえばいいとか生き地獄だとか様々な死にたいの語が出てくる。
絵に没頭し音楽に救われた頃はよく「生きていてよかった」と感じた。